活動の記録


2024年

11月9日(土)

 11月9日、2024年の調査会終いである。青空が広がり、絶好の散策日和。嬉しいですね。谷中湖西側の駐車場からスタートする。参加者は15名である。

 

 今日のルートは、護岸でマツバランを確認して、その後は多自然池をめぐるコース。マツバランはまだ見ぬシダ植物だが、古生マツバランの名称は聞いたことがある。古生マツバラン類は陸上植物最古の化石として知られるクックソニアを含む一群である。調べていくと、古生マツバラン類と現生のマツバランとの系統的なつながりは疑問視されているが、特徴に似たところがあるのは間違いない。

 

 数分歩くと護岸の入り口にたどり着いた。生息地をご存知の方が、護岸を降りて、場所を示してくれた。護岸の吹き溜まりのような、落ち葉で覆われている場所に所々、明るい緑色の植物がチョンチョンと生えている。一見して普通の植物とは違う。葉がついていない。二又に分かれて枝が伸びている。一度確認して植物の姿が分かると、さすがは植物好きの面々である。ここにもある、あそこにもあると、次々と近くの場所で見つけ始まった。比較的大きなものから、小さなものまで、ニ十株はありそうである。しかし、調べてみると、マツバランは熱帯から亜熱帯性の植物らしい。しかも、樹上または岩上に生えるという。渡良瀬遊水地に入り込んだのはなぜなのか?葉だけでなく、根もないという。根も葉もないマツバランである。地下茎が地中にはあり、菌類と共生しているらしい。腐生植物であるという。落ち葉に覆われた吹き溜まりは、好適な場所だったということか。いつ頃から入り込んだのだろう。一年でどの程度成長するのかが分かると侵入年代が判明する。二又分枝の回数が手がかりにならないだろうか。個体年齢がつかめると侵入年代が分かってきそうだ。

 

 多自然池のプラスチック道を歩いて行くと、オギなどに混じって、ヌカキビの暗紫色の個体がとても美しい姿だ。青空にかざすとシルエットが古い時代の紋様のような気がする。小穂が垂れているのが印象的だ。また、ここにはフジバカマが移植されたそうで、株がたくさんあり、果実になったものから、まだ花を咲かせているものもある。ノジトラノオも意図せず一緒に入り込んだそうだ。

 

 池の中にはイヌタヌキモがびっしりと生えている。食虫植物である。水面にはコオニビシが浮かび、アカウキクサの仲間も水面を覆っている。シダ植物である。アカウキクサにはオオアカウキクサもある。更に外来植物のアメリカオオアカウキクサもある。在来種なら絶滅危惧種であり、外来種なら特定外来生物になる。調べていくと面白いことが分かってくる。アカウキクサの仲間はアナベナというシアノバクテリアを共生させ、窒素固定能を有している。窒素が不足している環境でも生育に支障はない。東南アジアでは、日本におけるマメ科植物のゲンゲと同じように緑肥として利用されてきたという。アカウキクサとオオアカウキクサの判別は、アカウキクサの草体が平面的な三角形で、オオアカウキクサでは立体的な鳥足状であることだという。見慣れないと判別はできない。

 

 調査会後、有志でホソバイヌタデを見に行くそうだ。今回は残念ながら失礼する。

 

 渡良瀬遊水地は霜が降りると、冬景色になる。冬を越し、また来年も多くの植物に出会いたい。(KMae)

 

(続)

 Sさんがゴキヅルを探しているときホソバイヌタデがあったいうので、ヨシ原浄化池に行きました。あった!

 

 さらにヨシ原浄化池を巡ってみました。何かおかしい。部分的に一度ヨシが枯れたのではないか?本来背よりも高くヨシが密生しているはずなのに、異様に低い。これは一度枯れた後の芽生えだろう。裸地となっている部分もある。そこにいろいろなタデ類が。ヤナギタデは葉を食べるとからい。ニオイタデは濃い紅色の花と腺毛によい匂いがある。オオイヌタデなのかサナエタデなのか皆で協議をする。なかなか楽しい一日でした。(MO)



10月26日(土)

 保全作業 をしました。

 

 どんより曇り空です。やや肌寒い日で、力仕事にはちょうどよいかも。

 

 堤防の上から眺めると、遊水地に黄色い景色が広がっています。年を追うごとに顕著になっています。以前遊水地の中はこの時期黄色はありませんでした。オギの穂が白銀色に輝くだけの風景でした。黄色は、セイタカアワダチソウがどんどん増えて、花をたくさん咲かせるようになったからです。それも近年急速にです。

 

 セイタカアワダチソウは、環境省の「生態系被害防止外来種リスト」に入っていますが、これだけ増えるとすべて除去することはもはや不可能と思います(個人の感想)。手遅れと思えば虚無感が湧くが、遊水地にはまだ守らねばならない貴重な種がたくさんあります。

 

 当会は人手も少なく高齢者が多く、少しの貢献しかできないので、急を要する場所を選ぶ必要があります(求む!お手伝い)。

 

 今日の場所は、貴重種だらけでしかも遊水地でも他にない小型植物の宝庫の湿地です。

 

 最初にセイタカの抜き方の講習から。腰をかがめて抜くと腰を痛めるので、膝(ひざ)を曲げ身体を落とし立ち上がるようにして抜きます。

 

 貧栄養のためまだそれほどセイタカが入っていない今こそが保全のラストチャンス。1群落ができていたがすっかりきれいになりました。しかし地下茎が残っているので戦いは終わりではないでしょう。

 

 作業終了後、イヌセンブリを探しました。あったぁ!ちょうど開花期を迎えており、それも見事な花着きの良い株があちこちにありました。(MO)



10月12日(土)

 ここ数日の曇り空から一転して、今日は澄みきった青空、調査会びよりの10月12日。参加者13名。今日はハタケテンツキの確認のため、谷中湖の護岸を見に行く。駐車場で、簡単なレクチャーから始まった。Sさん提供の検索資料を参考にOさんから見分けるポイントについて。トネテンツキは渡良瀬で見つかっていないこと、アオテンツキはため池の水を抜いた後に出現すること、テンツキ・クロテンツキ・ヒデリコなどは日当たりの良い草原に出ること。同定の決め手はハタケテンツキの果実がラグビーボール状で花柱に縁毛がないこと。やはり最後はルーペでの確認が欠かせない。

 

 しかし、時すでに遅し。10月に入って洪水の危険性が薄らいだため谷中湖の水位は上がっていた。水際ラインに株が生えていたらしいが、惜しくも水中に没してしまった。確認は断念せざるを得ない、来年に期待するしかない。

 

 この日、谷中湖の水面はアオコに覆われ、緑の絵の具をかき混ぜたようだ。こうなると、酸素不足で魚が浮きあがり、腐臭が強烈になるという。湖水の波打ち際にはアオコに混じってザクロソウの種子が打ち寄せられて溜まっている。おびただしい数だ。ホソアオゲイトウは水位より高い所に生えているものも随分あるが、水没して頭だけ出しているものもある。ホソバツルノゲイトウが花をつけている。アレチニシキソウがコンクリートの隙間に根を生やし、オオニシキソウも同様。隙間に生えているのは、果たしてオギか、ススキか。そこでオギとススキの穂の違いをひとしきり談義。オギは株立ちせず小穂の芒は無く毛は銀白色、ススキは株立ちで小穂に芒があり小穂の毛は黄金色。確認の結果、小穂に芒は無く、オギとわかった。ギョウギシバでは、小穂のつき方が上面には付かず下面のみに2列が付いた格好で、そのことをKさんが図鑑で丁寧に説明してくださり、間髪を入れずに"行儀良く付いているから、ギョウギシバか"との発言に、なるほどと勝手に皆で納得した(その真偽やいかに)。アキメヒシバ、オオオナモミ、カヤツリグサとコゴメガヤツリ、アオガヤツリが見つかった。

 

 観察の楽しさは幾つもある。見て愛でる、名前を知る、写真に残す、違いを調べる、生態が分かる、しくみに気付く、などなど。フィールドワークは面白い!

 

 午後は有志での調査会、先月と同じ掘削池で実施。池の南側は綺麗に刈り払われて、日が当たる裸地に変わっている。西側から薮に入ると、タコノアシがお出迎え、足下には透明な水があり、タタラカンガレイが続く。ミズハナビ様のものは鱗片の長さが約1.2mmであること、鱗片の先端が切型ではなく先がとがっていることから、ツルナシコアゼガヤツリと判明。池の中のキクモの大群落は健在で、水中にマツバイと、同定には情報不足のミソハギ科の仲間らしきもの、オオバコ科の仲間らしきものがあった。どちらも葉は全縁、楕円形に近く、十字対生で直立していた。花柄があるものと無いもので、花のつくりについては詳しくわからない。情報不足である。

 

 途中で、渡良瀬遊水地のヨシは種子ができないことを知る。ヨシの不稔は倍数体が原因だそうだ。すると、ヨシ群落はクローン集団で、根茎だけで勢力を拡大していることになる。遺伝的多様性に乏しく、環境変化に適応できずに消滅する可能性がある脆い群落ということか。

 南側の小高い裸地を歩いて、池沿いをまわる。日が当たる裸地にはヨシ、コウヤワラビ、スギナが既に芽生えている。コゴメガヤツリ、ヒメジソ、ホウキギク、カラマツソウなども芽生えている。湿地性の植物は少ない。(KMae)



9月14日(土)

  9月になっても気温は相変わらず高いまま。参加者は暑いせいか、幾分少ない?ように感じます。7月13日以来久しぶりの渡良瀬遊水地は現在どんな様子でしょう? 

 

 今日9月14日は、7月13日に調査した、新しい掘削池をもう一度見に行きます。遷移初期にしか現れない貴重な植物が見られるかもしれないとのこと。期待が膨らみます。しかし、この夏の猛暑とゲリラ雷雨がどのように影響を与えているのか、ちょっと心配です。

 

 早速、集合した堤防上で、テンツキを発見。ハタケテンツキとの違いは、微毛が生えていることと、果実の形がラグビーボールではなく、栗の実状であること。トネテンツキ(遊水地では見つかっていない)とアオテンツキもラグビーボール状の果実でテンツキとは区別ができるそう。ルーペないしは実体顕微鏡が確認には必要。堤防上の草原にはヒンジガヤツリも沢山生えている。丸っこい小穂が3つ4つ、品の字をかたどっていると名づけたユニークな発想。お陰で、一度で名まえを覚えられる。

 

 車で移動して掘削池に着き、中に入って驚いた。ヨシの密度が格段に上がっている。ヨシばかりではなく、イシミカワ、カナムグラ、タデ類など足の踏み場もなく生えている。前回のスカスカの歩きやすい状況からは大きく変わってしまった。たった2ヶ月でこんなに変わるのか。一段低くなっているエリアには雨水が溜まって15cm程の深さになっている。花序枝が放射状に広がる先に小穂をつけ、まるで緑の線香花火のようなミズハナビが見つかり、同じく緑の花をつけ始まったタコノアシ、大株のカンエンガヤツリ、ヌマガヤツリ、ヤナギタデなども。ウスゲチョウジタデとチョウジタデの違いは、花床の毛の有無(ウスゲに有り)だそうだが、確認するのはここでは難しい。花柄が赤くなく緑色で、花が大ぶりな、ウスゲチョウジタデらしい。

 

 さらに進んでいくと、ワァッ、池の水際から内部まで、キクモの大群落。キクモの緑が一面を埋め尽くしている。もの凄い量だ。浅い場所では赤いほふく茎が束になってあらわになっている。これが、キクモの大群落の正体だ。緑の水面上をチョウトンボとアジアイトトンボが飛んでいる。なんとも清々しい景色である。キクモの群落は来年また見られるであろうか。

 

 コキクモも生育している可能性があるという。他の掘削池で見つかっているから。キクモは全体に毛が生えているが、コキクモには生えていないという。探してみるが、どうやらここには無いようだ。

 池の周りに沿って歩いて反対側に至る。前回トキホコリを確認した辺りだが、それらしいものは見当たらない。水を被って消失?代わりに、桐生から来ているSさんが弱々しいが花をつけたイヌゴマの株をヨシの合間に、小さい白い花をつけたヒメシロアサザをキクモの中に見つけた。アメリカタカサブロウの白い花が咲いている。那須塩原市から参加のKさんも今日のキクモの大群落とヒメシロアサザの白い可愛い花に満足されているようだ。戻る途中で、ワタラセツリフネソウの花を見つけた。花弁を覗くと白で斑点なしのタイプであった。

 

 今日は11時半頃に早めのお開きになりました。お疲れさまでした。

(KMae)


7月13日(土)

 7月13日、昨日の雨はあがり、曇り空のはずが、晴れて暑くなりそうです。今日は調査会ではなく、藤岡遊水池会館敷地内の湿地園の保全活動です。参加されている皆さんの顔は今日もイキイキしています。久しぶりに参加されたSさんを囲んで、まず顔合わせ。アクリメーションスタッフのWさんも参加されています。

 

 今日の保全作業は湿地園の草取りです。抜くべき草かどうかを確かめながら、ポツポツと抜いていきますが、何を抜けば良いのかわかれば、しめたもの。俄然ペースは上がります。ノカラマツに絡んでいるカナムグラを中心に抜いていきます。カナムグラの蔓に巻かれて弱々しいノカラマツ。背丈はあっても茎が細く、倒れそうです。フジバカマも蕾をつけたものが複数株あります。こちらは弱々しくはない。ほぼ一区画の作業が終わり、次の区画へ。ここは、セイタカアワダチソウが大小生えています。セイタカアワダチソウに狙いを定めて、一気に抜いていきます。土が柔らかく、株は抜きやすい。どんどん抜いていきます。途中で声がかかり、休憩に。Wさんのご好意で冷房の効いた会館内で休憩できました。冷えた麦茶まで振る舞っていただき、Wさん、ありがとうございました。

 

 再び作業再開。休憩前の疲れた顔は何処へやら。皆さんの作業ペースの回復は凄まじい。セイタカアワダチソウはドンドンなくなっていきます。ここには、ヤガミスゲが特徴的な葉の出し方で群生し、カサスゲが数株見つかりました。カサスゲの葉舌の特徴をOさんが解説してくださいました。

予定より早く作業は終了。抜かれた草は山のようになりました。作業後の湿地園はスッキリ、風がよく通りそうです。皆さん、お疲れ様でした。

 

 時間が余ったので、専門家Sさんにお願いして、急遽調査会を実施することに。検討の末、最近掘削された池に行ってみることになりました。掘削によって裸地化された場所の遷移初期の様子を確認しに行きます。掘削されてから2年めの場所です。入り口にはヨシが2m程度に成長しています。密度はそれほど高くはありません。ヨシをかき分けるのが、楽にできます。少し進むと、開けたエリアが眼前に現れました。水辺までは段差が設けてあり、段差ごとに植生は異なるようです。

 

 ここで観察された植物は、ミズガヤツリ、チャガヤツリ、コゴメガヤツリ、コウガイゼキショウの仲間の一種、タタラカンガレイ、タマガヤツリ、ヒメイヌビエなど。アゼナ、キカシグサ、トキンソウ、ハンゲショウ。水際に花をつけたキクモ、マツバイ、水中にはキクモの水中葉がたくさん、タヌキの尾のようにフサフサしています。沈水状態では閉鎖花をつけるらしいです。チョウジタデも多く、アオヒメタデ、ハルタデ、その他数種のタデ類。オモダカが矢尻型の葉を広げ、イヌゴマとニガクサはともに花をつけています。Sさんがミゾコウジュのロゼット葉と、アゼオトギリの芽生えを探して教えてくださり、ヨシの間にトキホコリの小さな個体も見つけてくださいました。

 

 湿地園には、プランターに貴重な植物が栽培されています。調節池内では見つけることが難しくなってしまった、シムラニンジンやミズトラノオ、ジョウロウスゲ、ヒメシロアサザ、フジバカマなど。本来なら調節池の環境下で維持されることが好ましいのでしょうが、緊急避難的に人為栽培して系統を絶やさないことが必要なのだろうと思います。(KMae)


6月22日(土)

タヌキマメの保全作業

 

 駐車場に集合して、タヌキマメの自生地に向かう。以前は市管轄のゲートボール場であったが、現在は草だらけで想像すら出来ない。手前のチガヤの原をかき分け進むと朱色の花咲くネジバナも見られた。その奥に見られるヨシ原の手前付近の草原で共生する10cmから30cmの丈に育ったタヌキマメの群落が姿を現わし出した。隣の草に寄りかかって成長していたタヌキマメはカマで草を刈払うと倒れてしまう状態続出なので、刈払う草丈をタヌキマメにあわせるなど気使いが必要である。倒れてしまう株も続出したが、翌日の雨を期待してそのままとした。更に作業はヨシ原の中に突入する。天候は快晴のうえ、ヨシに遮られ、風も期待できないなか、ヨシをカマで刈払う作業も回が重なると疲れるものである。皆さんワイワイと保全作業を行っていたが、疲労も見え始めたので、進み具合は当初計画の半分くらいであるが、予定の時間も迫ってきたので今回は終了することにした。来年には今回の保全作業を実施した区域での、ヨシなどの成長が抑制されることの実証とヒョロヒヨロのタヌキマメから強靭なタヌキマメへとなる変身を実感できることを期待したい。

 この後、希望者のみで丁度見ごろのノジトラノオの自生地を見学した。(HI)


6月8日(土)

6月8日(土)は普段と異なる堤防に集合。車の長い列が目印で直ぐに場所がわかった。皆さん、既に集まっている。新しい場所での散策のため、気合いが入っている模様。

 

O氏より今日の散策の目的について説明を受ける。掘削地の周りを調査して、掘削地で消えかかっている絶滅危惧種を探す目的である。名付けてシムラニンジン探索隊。総勢20名である。

この時期、ヨシは2mを超えている。そのヨシが生い茂る薮の中に分け入る。

 

ヨシ原内部は結構暗い。下草となるものは限られてきそうだ。ハルタデにアオヒメタデが目に入る。ゴマノハグサ、ノカラマツがスックと立っている。まだ花は咲いていない。シロバナタカアザミも直立。こちらは花序がつき、垂れて下を向いている。イシミカワ、ハナムグラ、ハンゲショウがヨシの間で負けじと頑張っている。ワタラセツリフネソウも柔らかい葉をつけている。シロネもある。

 

ハナムグラと命名したのは、牧野富太郎先生で、他の○○ムグラに比べ、白花が美しいとハナをつけたらしい。

 

トネハナヤスリの黄色く枯れかけの個体も地際に生えている。ヨシ焼き後に芽生えて胞子を飛ばしたなれの果て、地上部は6月末には姿を消す。

 

ヨシをかき分けるのに夢中で下ばかり見ていたが、ふと頭上に目をやると、なんと、枯れ草を絡ませた鳥の巣があるではないか。オオヨシキリの巣である。E氏が中をのぞいて卵が3つ入っていると声をあげた。オオヨシキリの卵は焦げ茶色の斑点があり、青みがかった白色である。カッコウがオオヨシキリの巣に托卵することがあり、カッコウの卵はオオヨシキリのそれよりひと回り大きいそうだ。今回はどうだったのか?中を覗いたE氏のみぞ知る。

 

アキノウナギツカミらしきものが咲いている。葉の形、茎を巻く様子は紛れもなくアキノウナギツカミである。ハテッ、この時期に咲くのか?秋を返上?安定しない天候で季節センサーが狂ったのだろうか。季節センサーは温度や日長の変化に反応することが知られている。湿性植物のセンサーではこんなことは考えられないか。秋から冬にかけての雨量の減少に伴い、水位は低下する。水位の低下を感知して秋を感じるセンサーだ。水位変動は日常的に起こっていて、季節の指標にはならない、これはあり得ない話か。あくまでも妄想ですので、くれぐれも真に受けないようにお願いします。

 

ハルタデもアオヒメタデもアキノウナギツカミも花には花弁はない。花弁と思うものは、実は裂けた萼である。

 

シムラニンジンらしきものは歩けども見つからない。

 

何度か水際に出くわし、右に旋回しつつ進むこと四半時、草原に出たと喜んだら、スタート地点であった。なるほど直線を進んだようで、弧を描いていたのだ。

 

次に、ミズチドリを求めて掘削跡地へ向かう。途中長靴が水没しそうな箇所を抜け、明るい草原へ。ヨシは生えているが薮にはなっていない。しかし、セイタカアワダチソウが随分と多い。遊水地の至る所で乾燥化し、侵入が進んでいるようだ。O氏によると富栄養化も進み、貧栄養を好む植物が消えかかっていると言う。とても残念なことである。

 

ミズチドリは大丈夫だろうか。以前はもっと群生していたと言う。

 

チゴザサが花を咲かせている。細い枝が波打ち、紅紫色のふさ状の柱頭を覗かせた姿は緑の草原にとてもよく映える。シカクイがある。トモエソウの黄色がある。一番花が終わったところだ。白い花をつけたカナビキソウ、タチスミレのどちらも小さく、目立たない個体を見つけてくれた。

 

シムラニンジンはここでも見つからない。本物に是非出会いたいものだ。写真から推測するしかないが、開花のしかたが独特なのではないか。吹き戻しという玩具がある。くるくると丸まった紙の筒に息を吹き込むと、ピューッと伸びる、単純なおもちゃだ。白い花弁が開花前、吹き戻しのように丸まっていて、それが伸びることで花が開くつくりのように見える。どなたかご存知であれば、教えていただきたい。

 

そうして帰途についた。

 

帰りの道すがら、オニナルコスゲ、マスクサ、コキツネノボタン、キキョウソウを見つけた。

 

散会する前には、O氏から次回の活動に向けてノジトラノオについて説明を受けた。(KMae)

 


5月25日(土)

晴天です。前日から較べればやや過ごしやすいですが、やはり直射日光の下は暑いです。

 

今日は、予定ではサクラソウ集団を図に落とす作業をするはずでした。

 

現地に行ってみると、なんとセイタカアワダチソウがびっしりと生い茂り、花の終わったサクラソウがその下に埋もれていました。

これはイケマせん。

 

本来の予定を放棄して、セイタカアワダチソウを抜くことになりました。

これを放置していたらサクラソウは間違いなく消え失せてしまうでしょう。

 

力を入れすぎるとブチッと音がして途中で切れてしまうので、なるべく弱い力でゆっくり引き抜くのがコツです。しかしそれでも必ず先の方は切れてしまいます。残った根茎からまた芽生えてくるでしょう・・・・(汗)。

引き抜いてみると、根茎が横方向に曲がっていってます。地表から浅いところに根茎が密集しているに違いありません。サクラソウの根茎との競合はどうなっているのでしょう?

いろいろ調べてみたいところです。

 

セイタカアワダチソウだけを抜き取って、今日は解散。

この恐るべき状況を見ると、今後もセイタカとの格闘は続けなければならないでしょう。

 

その後、タチスミレなどを見に行きました。開花が始まっていました。(MO)


5月11日(土)

今年からサクラソウを記録していくことになりました。

 

渡良瀬遊水地のサクラソウ集団は次のことで興味深いと思われます。

 

1.集団が若い(?)

状況から判断して、昔、旧巴波川の河川敷に生育していたサクラソウの種子が土中に埋まっており(シードバンク)、近年の土の掘削によって蒔き出され発芽して集団を作った、と想像されること。

 

2.サクラソウには異形花柱性が知られているが、長花柱花、短花柱花、等花柱花のいずれもがここでは見られ、各パッチごとに異なっているようである。

 

今後集団が環境に適応して広がっていくかどうかその動態を記録すること、また異形花柱性を利用して遺伝的多様性が集団の中でどう変化していくかその動態を記録することを、会として継続的にできればと考えております。

 

本日サクラソウの花は終わっていました。

今年は手始めなので、とりあえずノウハウを得ようというつもりです。(MO)

 


4月20日(土)

 4月20日、年度初めの総会が開催された。今年は「知る活動」に加えて「守る活動」を重視していくことが承認され、早速活動が始まった。

 

 春は、サクラソウの保全をメインに据える。サクラソウの、まずは調査から。その自生地に総会後足を向けた。本家の桜より濃いピンクで可憐な花がちょうど見頃。サクラソウとは、なんと春にふさわしい名前だろう。周りには、チョウジソウもトネハナヤスリもある。ニョイスミレも所々にある。セイタカアワダチソウの幼植物もいっぱい顔を出している。ヨシ焼き後の明るい環境下はこれらの植物の芽吹きに必要不可欠。

 

 自生地に向かう道すがら、ノダイオウの大きな葉に出会う。アケビの雌花と雄花が咲いていた。どちらも淡紫色の3枚の萼片に雌しべまたは雄しべのみのつくりで、花弁をもたない。淡紫色と言うが、温かみのある色合いで、人工的には作り得ない色だと思う。牧野図鑑には、果実が一方に縦裂して果肉が現れるから「開け実」と、名の由来に関する一つの説があげられ、植物を指すときはアケビカズラが正しいとある。

ハタベスゲらしきもの、小葉5枚のオヘビイチゴ(小葉3枚のヘビイチゴに対して)、ノカラマツ、ヌマアゼスゲなども歩きながら、確認した。

 

 また、傍らのヨシ原には、ノウルシの株が黄色い、花とおぼしきものを咲かせている。地下茎は二又分枝を繰り返し、先端から新芽を出す。点々とある株の群落はそのようにして大きくなってきたのだろう。黄色に見えるのは、花弁ではなく、2枚の苞葉で、その上に花弁をもたない雌花と雄花が咲いている。植物の花をつくる遺伝子モデルとしてABCモデルというのがある。

あくまでも両性花を説明するモデルだが、単性花や花弁・萼片がないものを説明するモデルがあるのかどうか。規則的な構造を形成するには系統だった遺伝子の働きが背景にはあるはずで、多種多様なつくりの数と同じだけ遺伝子の働きのパターンもあるということである。

 

 サクラソウに話を戻そう。調査はこれからである。新しい知見として何が見出されるのか、ワクワクする。これまで、サクラソウはニ型花柱性と考えられ、自家受粉を回避する仕組みとして、長花柱花・短花柱花を形成すると思っていたが、等花柱花も存在する。等花柱花は元々あったのか、それとも適応の結果、新しく形成された形質か?ポリネーターとなるマルハナバチは実際にはどの程度受粉を担っているのだろうか。次から次へと疑問が湧いてくる。今年も面白くなりそうだ!(KMae)